【ビールレビュー】スプリングバレー ジャパンエール〈香〉 – フルーティなアロマの奥にある調和の精神
ジャパンエール〈香〉はその名のとおり、スプリングバレーシリーズのなかでも特に香りを重視しつつ、日本人に味覚に心地よい飲み口を実現したクラフトビール。
キリンビールにて開発された日本産ホップ「MURAKAMI SEVEN」をはじめとした厳選ホップを、「ディップホップ製法」というホップを漬け込む製法をもちいることで、豊かかつ特別な香りを生み出しているとのこと。
原材料は麦芽とホップ。度数は6%。色合いは明るい金色であり、泡もまた若干黄色がかっている。麦の旨みを予感させる匂いと、緑色のフルーツを連想させるさわやかな香り。いいね。
さて飲んでみよう。泡はキリンらしく、一見荒めのようなのだが、グラス上部においてはねっとりクリーミーなものに変わるタイプ。
お味は? うまい。さすがキリン、さすがスプリングバレーとうなってしまうが、その一方特筆すべきものが見出せない。文章にするのにこまる。
重厚or軽快でいうなら軽快で、麦芽の旨みをガッツリ感じさせるというよりはホップのフルーティ&アロマな要素を重視している―――といえばまちがいではないと思うのだが、ちょっと表面的だ。
このビールをしいて一言でいうなら、すこぶる上質でかつバランスのいいビール……というところではないか。
苦味、旨み、甘さやフルーティさ、クリーミーさやコク―――それらすべてが極めて質の高いものを有しつつ、すべてが“適度”で“節度”を守り、突出することなく調和しあっている。
そこまで考えて、このビールの名前を思い出す。ジャパンエール。日本は和の国。調和の国。なるほどその名にふさわしい味わいなのかも知れない。
フルーティ系のビールではあるものの、イメージされるのは舶来の果物類ではない。想起されるのは我が国、日本のありふれた野山の風景だ。
ライトなようで奥深い―――飲む人の心象風景によって印象が変わるのではないかとも思われるクラフトビール。
ふるさとの美しい自然でもながめながら飲んでみたい。そんな逸品ではないだろうか。