pipes by Pixabay

 シガーやパイプをやってみようと思ったきっかけは、長いこと紙巻きタバコを吸い続けて、とうとうそれに愛想が尽きたからである。

普通にタバコを吸い続けて、普通にやめたくなった

 もともと紙巻きタバコなんぞをうまいと思ったことはほとんどないのである。

 タバコを吸い始めたきっかけなどもう忘れてしまったが、まあ、何かしらいいことがあると思ったからであろう。

 しかしそんなものは存在せず、いつのまにかすっかりニコチン?依存症(?をつけたのは、一般的なタバコ依存症の原因がニコチンにあるのかどうか、いまは怪しく思っているからだ)になってしまい、その禁断症状を緩和するためだけにタバコを吸い続けた。

 紙巻きタバコがあきらかに自分の体調を損なっていることは分かっていた。吸った瞬間は禁断症状が緩和されてスッキリするが、すぐに胸はムカつき、気分は憂鬱になり、気力や活力が減衰する。

 世間一般の人々と同じく、多くの紙巻きスモーカーはタバコが体に悪いと信じている。口ではタバコを擁護するかも知れないが、タバコが自分の体調を悪くしているのは日々実感しており、いつかタバコをやめられる日が来ることを夢見ている。

 自分もそうだった。で、ついに意を決してやめようと思った。しかし難しい。様々な禁煙法は無駄に終わった。

 そんなとき、

「禁煙や減煙したい奴はパイプか葉巻を吸え」

 という意見を、あちこちで見かけた。

パイプや葉巻は依存症になりにくい?

 それら意見が言うには、

「紙巻きタバコをやめられない主原因はニコチンではない。本来のタバコにはないなにかのせいである(紙だったり、燃焼促進剤だったり、各種添加物だったり意見は様々だ)。

 またなまじ軽いせいで、肺喫煙してしまうためもあるだろう。パイプたばこや葉巻にはそういったものが入ってないし口腔喫煙なので、重篤な依存症にならずに済む。

 事実自分も、出先であくせく喫煙所を探したりはしない。場合によっては、数日吸わなくたって平気だし、世の中には月に一本葉巻を吸うだけの人もとかいる。

 いったん葉巻やパイプを吸い、依存症の真の原因と縁を切ってから、あらためて禁煙に挑戦すれば良い」

 とのこと。

 なるほどと思わなくもなかった。禁煙に向け、軽いタバコに変えるというよくある方法を取ったこともあったが、本数が増えるばかりで、より依存が強まっただけに感じられた。

 軽いタバコは味的な満足感を増やすため、よりさまざまな添加物が入っているといわれる。またやや陰謀論的ではあるが、依存性を増やすためやばい薬品を混入しているとの話も聞いた。

本物のタバコがもたらした衝撃

 それならば試してみようと考え、とあるタバコ屋で葉巻を買った。

 葉巻といっても、多分アメリカかヨーロッパ産の安いドライシガー(あるいはプリトスシガリロ)で、いま思えばたいしてうまくもないシロモノだったと思う。

 それでも初めて吸った瞬間、衝撃を覚えた。

 強い! 辛い! ―――でもうまい! と思ったのである。タバコをうまいと思ったのは初めてのことだった。

 それで葉巻に大いに興味を抱いたが、葉巻は流石に高い。自分が最初に買ってみた、安ドライシガーですら高いと感じた。

 それで、いささか初期投資は要するがパイプをやるようになった。

 最初に買ったパイプ本体は、ローランドだったと思う。1万円くらいのやつだ。

 パイプ喫煙はある程度の知識と慣れを要するが、やがて上手いか下手かはともかく―――いまもパイプスモーキング技術的なものはそれほど重要視していない―――きちんと吸えるようになった。

 パイプも、うまい。もちろん物によって差異はあるし、吸いづらいものもあるのだが、シガレットよりは遥かにいい。葉巻と違って、手が出ないお値段でもない。

 私はパイプをメインに喫煙してゆくことと決めた。

問題は解決された

 さて、もともとの目的であった、禁煙へのステップという意図は―――というと、禁煙したいという考えそのものがいつの間にか消えていた。

 紙巻きタバコ喫煙時に抱えていた問題が、ほぼなくなったからだ。

 体調面の問題は解決した。シガレットを吸っていた頃は、タバコを吸ってもニコチンが補給された満足度はあるものの、同時に心身は気怠く憂鬱なっていたものだが、パイプタバコだとそんなことはない(過剰に吸いすぎたらさすがに話は別だが)。

 むしろモノによっては、心身がはっきりと元気になることもある。

 パイプや葉巻のスモーカーの中には、

「タバコは体に悪くなんてない。むしろいいよ」

 と割と本気でいっているふうの人も多いが、その気持ちもいまはわかる。少なくとも短期的に心身を好状態に持っていけるのは確かだからだ。

 紙巻を吸っていたころ、一時間に一本は吸わねば気が狂いそうだったあの渇望感も消えた。

 タバコを求める肉体的、心理的欲求がなくなったわけではない。欲求はあるが、しかしいま私の中にあるタバコ欲は、以前のものとは別物だ。焦燥を駆られるようなものでも、我慢できないようなものでもない。

 それはいってみれば健全な空腹感に近い。例えば出先で夕方16時ごろ「吸いたいな」という気持ちが起こったとしても、

「お家に帰ってから、きょうはあの銘柄のタバコをゆったり吸おう。それを楽しみに、しっかり“お腹”を空かせておこう」

 そんなふうに思えるようになったのである。そんな感じで、いまの私はせいぜい5~6時間に一服で十分である。

 また月に2万円近くかかるタバコ代から解放されたいという想いもあったのだが、それも気にならなくなった。

 パイプはコスパがいいとはいうが、実際にはパイプ本体や様々なグッズにも手を出すことになるので、タバコにかかるトータルの費用ということではむしろ以前より高くなっていたように思う。

 けど別にいい。シガレット喫煙と違い、パイプ喫煙には価値と喜びがある。

 趣味に月数万円かけようが、そんなの普通ではないか。思うに多くのシガレット吸いが月々のタバコ代に悩み葛藤しているのは、自分が吸っているものにそんな価値などないと心の中で理解しているからだ。価値があると思えば、数万円くらいならどうということもない。

 というわけでお金のことも気にならなくなると、最初は敬遠していたシガーにも再び手が伸びる。

 そしてやがてキューバンシガーに出会う。こんなうまいタバコが―――いや、こんなうまいモノがこの世にあったのかという感動とともに。

シガー及びパイプのススメ

 体に益を与えるという食べ物でも、もしそれが傷んでいたり腐っていたりしたらどうだろう? 訳のわからん農薬や添加物がてんこ盛りにされていたら? 逆にオーガニックや保存料無添加にこだわりすぎて、病気や病原菌に侵されていたとしたら?

 食品にせよ嗜好品にせよ、人体に摂取するにあたり大切なのはやはり質であろう。質の高いものは心身に良き影響を与えるし、低いものは悪い影響を与える。

 まあ「いいものならタバコも体にいい」なんて断言するつもりはさすがにないし、喫煙習慣のない人にシガーやパイプを勧めるつもりもない。

 ただ現状紙巻きタバコを吸っており、そのことに不満や不快感を持っている人がいたら、是非ともシガーやパイプの世界に移ってみることをおすすめしたい。

 そんな気持ちもあり、シガーやパイプタバコについて、あれこれ書いていってみたいと思う。