アサヒスーパードライ

 アサヒのスーパードライは、なんだかんだで日本でいちばん「おなじみ」なビールなのだろうか。

 一口飲むと「うーん、居酒屋の味!」そんなふうにつぶやきたくなる。

 原材料は麦芽、ホップ、米、コーンスターチ。度数は5%。透明感ある爽やかな柑橘色の中に、どこか濃さや強さも感じさせる色合い。

 飲み口もカジュアルなようで軽薄ではなく、ギリギリで堅苦しくならない重厚さのようなものもある。

 苦味、酸味、旨み、甘みが絶妙な調和をしている。

 ドライビールの先駆けだけあって、辛口。それでいてライトな飲み口。しっかり苦味はありつつ、キレが良くて後に残らない。ビール単体のみで味わったとしても、一口ごとに特有の辛口を楽しめる。

 香りは控えめな方か。わずかに感じるホップの香りは、都会の夏の夜、微かに感じた涼風のイメージ。味同様キレがよく、他の料理などを邪魔しない。これが、多くの飲み屋や飲食店で採用されている所以かもしれない。

 泡は荒めで、クリーミーなタイプではないが、軽やかで軽快なソーダ的な刺激を楽しめる。

 文章にするにあたって改めてじっくり飲んでみたが、なかなかに多面性のある、奥深いビールなのではないかと思わされた。

 硬派な苦さ。ある種のファーストフードのようなカジュアルさ。しっかりしたパンチのある味わい。それでいて他に干渉しないキレや清涼感。

 古典的なものを思わせるしっかりした苦味や旨みは、同時にサイバーパンク的な未来世界も連想させ、それらが混じり合って“現代”というものも感じさせる。

 そのような多面性の中から、飲む側が自分の望むものを無意識のうちに選択し、引き出した結果「うまい!」となる―――それゆえに、多くの人々に愛される「おなじみ」になったのではないか。 

 そんなふうに考えさせられた、つまりやはり「凄いビール」なのだと思う。