エビスビール

 100年以上の歴史を持つ日本の代表的ビール、エビス。サッポロビールの前身である日本麦酒醸造會社がその名も「恵比寿麦酒」を発売したのは1890年―――明治23年のことだそうな。

 原材料は麦芽とホップ。度数は5%。色合いは、他のビールに比べてやや濃い目に見える。

 飲んでみると、うん、大人の味という印象を受ける。

 もちろんビールなんて、飲み慣れない人からすればどれも苦い大人の味なのだろうが、ある程度ビールの味に慣れた者にとっても、このビールは他と比べて大人な印象を受ける。

 重厚で濃厚な味わい。そこにある品格。

 単純に上品なだけではない。酸いも甘いも噛み分け、清濁併せ呑む度量を持った、成熟した人間の品格―――そのようなイメージを感じるのである。

 落ち着いているがしっかりとした麦芽の風味。

 コクある旨みと拮抗し合うほろ苦さ。その奥にあり爽やかさを生み出す酸味 。

 古風、伝統、そして和風も感じさせる。柑橘系のフルーティな香りから、なぜか柿を連想した。

 見方を変えれば、どこか重たく、カジュアルさには欠けるビールともいえるかもしれない(味は飲みやすいのだけれども)。グビグビ一気飲みするのではなく、まさに特別な日に、特別な料理とともに、じっくりと味わいたい“麦酒”である。