【ビールレビュー】よなよなエール – フルーツの香りをまとった硬派な苦さ。王道のアメリカンペールエール
よなよなエールは長野のクラフトビールメーカー、ヤッホーブルーイングの代表的製品。
クラフトビールブームの火付け役ともなった「アメリカンペールエール」をビアスタイルとし、飲みやすく飽きにくいながら本格的な、クラフトビール入門編にして王道の味わいを楽しめる逸品らしい。
原材料は麦芽、ホップ。ホップは香り高さで有名なカスケード。度数は、5.5%。
公式ウェブサイトによると、このビールはちょっとぬるめの13度で飲むのがオススメだそうだ。冷蔵庫から出して、十数分たってから開封する。
グラスに注ぐと、それだけで香ってくる。甘いマスカット、それとともにあるオレンジ。色はなかなか濃いめの琥珀色だ。
若干オレンジ色がかった泡は、繊細かつクリーミーな、コクのあるタイプ。さて一口。フルーティな甘さと香りが口の中にぱぁっと広がる。とほぼ同時に、かなりガツンとしたビールの苦味が来る。
結構尖った苦味である。そのなかにハーブっぽさがあるからかも知れない。甘いマスカット&オレンジは、みずみずしい新鮮なグレープフルーツの印象に変わる。
うーん、旨い。染みる味だ。多面性もあるように感じる。
ある一口では、グレープフルーツの奥にやはりマスカットを感じたりもするし、また別の一口ではオレンジの中にある麦の旨みを感じたりもする。苦味が尖っている一方、飲み口は軽やかなでさわやかなのも、ある種のおもしろみがあるコントラスト。
余韻を味わうつもりで飲んでみよう。あと引く味わいはやはり苦味。だがそのなかになかなかユニークな旨みを感じる。ハーブが混じった、熟成されたチーズのような味わいがほのかに。
最大の個性は、やはり苦味かな、と思う。
個性的なビールであると同時に、ビールという飲料の最大の個性である苦味を重視しており、その苦味をしっかりと味わえるクラフトビール。その苦味を、フルーティな甘さや旨みが、絶妙なバランスで“旨さ”の範囲にとどめている。
クラフトビールらしく、探求しがいのある奥深い味わいだ。よなよなエールという名称、パッケージに描かれた月―――なるほど静かな夜、月でも見ながら瞑想的に飲んでみたいビールである。