【ビールレビュー】キリンラガービール – 歴史ある濃厚さと重厚さ。苦味と旨み、甘みの調和
キリンラガービールは日本が誇る歴史あるビールのひとつだ。
誕生は1888年(明治21年)! 以来、130年以上に渡って多くの人に飲まれ、愛され続けてきた。
原材料は麦芽、ホップ、米、コーン、スターチ。度数は5%。色合いには若干の濃さが感じられ、歴史ある伝統的なビールの風格を感じさせる。
ラガーというちょっといかつい名前の響きから、むかしは「本格派だけれども、癖が強くて飲みにくいビールなのではないか」という印象を勝手に持っていたものだ(実際のところラガーとは下面発酵という方法で醸造されるビールのことで、ビール製造の主流スタイルであり、我々が知るたいがいのビールはラガーである)。
しかしながら一口飲めば、その濃い甘さとさわやかなフルーティさに驚く。まろやかなクリーミーさの中にあるやわらかな酸味。香りにはどこかミルクっぽさもあり、飲みやすいし、うまい。
一方、ビールの苦さを表す世界共通の単位たるIBUは25で、これはエビスビールと並び、日本の大手メーカーから発売される一般的なビールのなかでは(つまりスーパーとかでよく売られているビールのなかでは)トップクラスの苦味を持つという意味になるらしい。
IBUに関しては主観と異なることが多々あるが、これは苦味は強くても甘味や旨みなどもそれ同等、あるいはそれ以上に強ければ、それによって苦味を感じにくくなるということのようだ。
なるほど、そういえば葉巻にもそういうところがある。まったく同様といっていいのかどうかは分からないが、極めて強くてきつい、とされるシガーが、味覚的にはとてもまろやかで甘い、と感じさせられた経験は何度もある(パルタガスとかオヨとかね)。
ともあれ、じつはしっかりと存在する苦味のおかげで、甘みや旨みも、軽薄にならないレベルに収まっており、甘く飲みやすいようで、骨太で硬派なビールという印象を受ける。
キリンラガービールは明治の時代に、ドイツ人の醸造技師を招いて開発したものだそうだ。その時代の日本やドイツの風景に想いをはせながらじっくりと飲むと、格別の風情が感ぜられる。
となると、やはり古典的かつ本格的な、奥深く重厚なビールなのだと思う。